ESG経営とは?|地域の企業が「S」を伝える、ローカルメディアという方法

「ESGに取り組んでいますか?」。取引先の金融機関や大手企業から、そう聞かれる地域の企業が増えています。環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)のうち、地域の企業がいちばん語りやすく、しかも伝わりにくいのが「S」、つまり地域や人との関わりです。この記事では、ESG経営の基本を押さえたうえで、地域の企業が「S」を形にして伝える方法として、ローカルメディアという考え方を紹介します。
ESG経営は、環境・社会・ガバナンスの3つを、売上や利益と同じように経営の判断に入れる考え方です
地域の企業にとって身近なのは「S(社会)」。地域との関わりは、すでにある取り組みを言葉にするところから始められます
ローカルメディアは「地域の情報を伝える場」をつくることで、関わりを続け、外にも見える形にする方法のひとつです
目次
ESG経営とは? 環境・社会・ガバナンスを経営の判断に入れること
ESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス、企業の運営のしかた)の頭文字です。もともとは投資家が企業を評価するときの視点として広がりましたが、いまは取引先選びや融資、採用の場面でも見られるようになっています。
地域の企業にとって大きいのは、地域の金融機関の動きです。環境省は令和元年度から「地域におけるESG金融促進事業」を続けており、地域の金融機関が、環境や社会へのよい影響、地域の持続可能性につながる取り組みを進めるのを後押ししています(環境省「2023年度ESG地域金融に関するアンケート調査結果の公表について」)。地元の銀行や信用金庫との対話のなかで、ESGの話題が出てくる場面は、これからも増えていきそうです。

3つを一度に完璧にする必要はありません。すでにしていることを、まず3つの枠に分けて書き出してみるのがおすすめです。
地域の企業がまず取り組みやすいのは「S(社会)」
大きな設備投資が必要になりやすい「E」や、社内の仕組みづくりが中心の「G」に比べて、「S」はすでに日々の仕事のなかにあることが多いのが特徴です。地元の人を雇っていること、地域のお祭りや学校の授業に協力していること、地元の素材を使っていること。どれも立派な「S」の取り組みです。
ただし、こうした取り組みは「当たり前のこと」として、外に伝えられていないことがほとんどです。ESGの文脈では、取り組んでいることと同じくらい、それが見える形になっているかどうかが問われます。
たとえば、こんな会社
地元の農家から原料を仕入れている食品メーカー:仕入れ先の数や、地域で使ったお金の割合を毎年まとめて、サイトに載せる
職人の高齢化が進む工務店:地元の高校生向けに現場見学を続け、その様子を社員が記事にして発信する
家業を継いだばかりの旅館:近くの店や作り手を紹介する冊子をつくり、宿泊客に手渡しながら、地域との関わりを伝える
ローカルメディアは、地域との関わりを「続けて、見せる」方法
ローカルメディアとは、特定の地域の人・店・出来事を伝える媒体のことです。ウェブサイトやSNS、冊子、ラジオ、イベントなど、形はさまざまです。企業がローカルメディアに関わると、地域の情報を届けること自体が地域への貢献になり、同時に、自社の「S」の取り組みが自然と外から見えるようになります。
PlayBlueも、地域でローカルメディアを立ち上げ、続けてきました。そのなかで感じるのは、企業の宣伝として発信するよりも、地域の人や店を主役にして伝えるほうが、結果として会社への信頼につながりやすい、ということです。
実例:工場を開くことが、地域の発信になった「燕三条 工場の祭典」
新潟県の燕三条地域では、ものづくりの企業が工場を一斉に開放するイベント「燕三条 工場の祭典」が開かれています。三条市の報道資料によると、2013年10月の第1回には全国から約1万人が訪れ、翌年の第2回では59の工場が開放されました(三条市 報道資料「燕三条 工場の祭典」)。
一社ではなく地域の企業がまとまって現場を見せることで、地域そのものが伝わる場になっています。イベントもまた、ローカルメディアのひとつの形と考えることができます。

いきなり自社でメディアを立ち上げなくても、地域のメディアと組んだり、現場を開いたりするところから始められます。
「S」の取り組みを言葉にする、書き出しの型
伝える前に、まず社内で取り組みを整理しておくと、発信の内容にも、金融機関や取引先との対話にもそのまま使えます。次の4つの項目で、1つの取り組みにつき数行ずつ書き出してみてください。
何を:どんな取り組みか(例:地元の高校生向けの現場見学)
いつから・どれくらい:始めた年と、回数や人数(例:2019年から、毎年2回・延べ120人)
なぜ:始めたきっかけや、会社として大事にしていること
何が変わったか:地域や会社に起きた変化(例:見学に来た生徒から、2人が入社)
数字が手元にないときは、「わかる範囲で」「これから記録する」と書いておけば十分です。書き出したものが3つほどたまれば、それだけで、自社の「S」を説明する材料になります。
始めるときは、この3つを決めておく
1. 誰に、何を伝えたいか
地域の人に向けるのか、取引先や金融機関に向けるのか、これから採用したい人に向けるのかで、伝える内容も場所も変わります。まずは相手を1つにしぼりましょう。
2. 続けられる量
ローカルメディアは、続くことで信頼が積み上がります。月に1本の記事、季節に1回の冊子など、無理なく続けられる量から決めるのが大切です。
3. 見る数字
記事を読んだ人の数だけでなく、「取材をきっかけに生まれた取引」「見学や問い合わせの数」「採用の応募で記事を読んだと言われた数」など、関わりが広がったことがわかる数字を2〜3個決めておくと、ESGの取り組みとして振り返りやすくなります。
取り組みの伝え方に迷ったときは、AIでたたき台をつくるのもひとつの方法です。TSUMUGU for Local は、事業の情報を入力すると、伝え方の言葉と3ヶ月の作戦をまとめられるツールです。
よくあるつまずきと、その対策
会社の宣伝ばかりになってしまう
自社の商品やサービスの紹介が中心になると、読む人は離れていきます。地域の人や店、出来事を主役にして、自社はその「伝え手」に回るくらいがちょうどよいバランスです。
担当者がひとりで抱えて止まる
発信を一人に任せると、異動や繁忙期に止まりがちです。取材は社員が交代で行う、編集だけ外部の人に手伝ってもらうなど、仕組みで続けられるようにしておきましょう。
取り組みを大きく見せようとしてしまう
ESGの発信で信頼を失いやすいのは、実態より大きく見せてしまうことです。数字や事実をそのまま伝え、「まだできていないこと」も正直に書くほうが、長く信頼されます。
よくある質問
Q. ESGとSDGsは、何が違うのですか?
A. SDGsは国連が定めた、2030年までに世界で目指す17の目標です。ESGは、企業が環境・社会・ガバナンスにどう向き合っているかを見る視点です。SDGsという「目標」に向けて、企業がESGという「経営のしかた」で取り組む、と考えるとわかりやすくなります。
Q. 社員が少なくても、ESG経営に取り組めますか?
A. 取り組めます。まずは、すでにしている地域との関わりや、環境への配慮を書き出すことから始めましょう。新しいことを足すより、いまある取り組みを見える形にするほうが、少ない人数でも続けやすくなります。
Q. ローカルメディアは、自社で立ち上げないといけませんか?
A. その必要はありません。地域の新聞やウェブメディアに取材の機会をつくる、地域の冊子に協賛する、工場や店を開いて見てもらうなど、すでにある場を生かす方法もあります。
まとめ
ESG経営は、大きな企業だけのものではありません。地域の企業にとっては、日々の仕事のなかにある「S(社会)」の取り組みを言葉にし、続けて見せていくことが、最初の一歩になります。ローカルメディアは、そのための方法のひとつです。まずは、自社がすでにしている地域との関わりを、3つ書き出すところから始めてみてください。
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