「マーケティングに詳しい人に、副業で手伝ってもらえないだろうか」。社内に担当を置けない地域の会社で、こうした相談を聞くことが増えてきました。経験のある人に、少ない時間から入ってもらえるのは心強い選択肢です。ただ、頼む前の準備が足りないまま始めると、「思っていたのと違った」で終わってしまうことも少なくありません。この記事では、副業のマーケ人材に頼む前に決めておきたい3つのことを、すぐ使える型と一緒にまとめました。この記事のポイント頼む前に決めておきたいのは「任せる範囲」「時間とお金」「見る数字」の3つです副業人材は月10〜20時間ほどの関わりが多いので、「全部お任せ」より「ここをお願いしたい」と絞るほうがうまくいきます業務委託で頼むときは、2024年11月に始まったフリーランス法のルール(条件を書面で示すなど)も押さえておきましょう副業のマーケ人材は、こんなときに向いています副業のマーケ人材とは、本業を持ちながら、空いた時間で別の会社のマーケティングを手伝う人のことです。週に数時間、オンライン中心で関わる形が一般的です。向いているのは、たとえば次のような場面です。何をすればいいかの方向づけや、優先順位の相談相手がほしいSNSやホームページを、社内の誰かが手を動かしながら続けられる形に整えたい正社員を採用するほどの仕事量はまだないが、経験者の目は入れたい一方で、毎日の投稿や問い合わせ対応のように「常に誰かが張りついていないと回らない仕事」は、副業の関わり方とは相性がよくありません。このあたりの線引きが、最初の決めごとにつながります。ちなみに、中小企業庁の2024年版 中小企業白書では、他社で働く人を副業・兼業として受け入れることについて、約7割の企業が「検討していない」「今後も受入れる予定はない」と答えています。まだ使っている会社は少数派で、そのぶん準備のしかたで差がつきやすい分野だといえます。決めておきたいこと①:任せる範囲(何を・どこまで)いちばん大事なのが、何を任せて、何を自分たちでやるのかを決めておくことです。ここがあいまいなまま「マーケティング全般をお願いします」と頼むと、相手は何から手をつければいいか迷い、会社側も何を期待していたのか言葉にできないまま時間が過ぎてしまいます。「考える」「つくる」「動かす」に分けて考えるマーケティングの仕事は、大きく3つに分けられます。考える:誰に、何を、どこで伝えるかの方針、優先順位、月ごとの計画つくる:紹介文、投稿の文章や写真、チラシやページの中身動かす:投稿・更新・広告の設定、問い合わせへの返信、数字の集計副業人材にいちばんお願いしやすいのは「考える」と、その一部の「つくる」です。「動かす」は社内に残しておくと、契約が終わったあとも仕組みが社内に残ります。業種別の切り分け例(架空の例です)地方の和菓子店:贈答需要を広げたい。副業人材には「ギフト向けの見せ方とInstagramの方針づくり」をお願いし、撮影と投稿は店のスタッフが担当町の工務店:ホームページからの問い合わせを増やしたい。副業人材には「施工事例ページの構成と文章の型づくり」をお願いし、事例の写真とメモは現場担当が用意家業を継いだばかりの製造業の二代目:自社商品を一般のお客さま向けに売り出したい。副業人材には「最初の3ヶ月の計画と、販売ページの言葉づくり」をお願いし、決裁と社内調整は二代目本人が担当どの例も、「社内の誰が、何をやるか」まで一緒に決めているのがポイントです。決めておきたいこと②:時間とお金(どれくらい関わってもらうか)次に、月にどれくらいの時間関わってもらい、いくらお支払いするのかを決めます。副業人材は本業があるため、使える時間には限りがあります。月の時間から逆算して、お願いすることを絞るたとえば月10時間の関わりなら、月1回の打ち合わせ(1時間)、その準備と振り返り(2〜3時間)、資料や文章づくり(5〜6時間)くらいが目安です。この時間で「SNS・ホームページ・チラシ・広告を全部見てほしい」は、さすがに無理があります。時間が限られているからこそ、①で決めた範囲を、さらに「最初の3ヶ月でやること」に絞りましょう。連絡のしかたと、返事の目安も決めておく本業の時間中は返事ができない人も多いため、「連絡はチャットで、返事は2営業日以内」「定例は月2回、平日夜にオンラインで」のように、やりとりのルールを最初に決めておくと、お互いにストレスが減ります。業務委託なら、条件を書面で残す副業人材に個人として業務委託で頼む場合は、2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法のルールが関わってきます。厚生労働省の案内資料では、発注する側は、業務の内容・報酬の額・支払期日などの条件を、書面やメールなどですぐに示すことが求められています。また、報酬の支払期日は、成果物などを受け取った日から60日以内のできるだけ早い日に設定する必要があります。難しく感じるかもしれませんが、「何を・いつまでに・いくらで・いつ払うか」をメールで送っておく、と考えればシンプルです。次のような型をそのまま使ってみてください。お願いする内容:(例)Instagramの運用方針と、月4本分の投稿文のたたき台づくり期間:(例)2026年12月〜2027年2月の3ヶ月関わる時間の目安:(例)月10時間程度、定例は月2回報酬:(例)月額◯円(税別)支払期日:(例)毎月末締め、翌月末払い社内の担当者:(例)撮影と投稿は◯◯、決裁は代表報酬の相場は、経験や地域、お願いする中身によって大きく変わります。金額だけで決めるより、「この時間で、この範囲をお願いできるか」を相手と一緒にすり合わせるほうが、結果的に納得感のある形になります。決めておきたいこと③:見る数字(何が起きたらうまくいったとするか)最後に、3ヶ月後に何を見て「うまくいった」「見直そう」を判断するのかを決めておきます。これがないと、振り返りが「なんとなくよかった」「なんとなく効かなかった」で終わってしまいます。数字は2〜3個にしぼる見る数字は多すぎると追いきれません。最終的に増やしたいもの(問い合わせ・来店・売上など)を1つ、その手前で動きが見えやすいもの(プロフィールへのアクセス、ページを見た人の数など)を1〜2つ、が目安です。最初の1ヶ月は「いまの数字を測る」だけでもいいそもそも、いまの問い合わせ数やアクセス数がわからない会社も多いはずです。その場合は、最初の1ヶ月を「いまの数字を測れるようにする期間」にしても大丈夫です。基準がわかれば、2ヶ月目以降の変化が見えるようになります。最初の打ち合わせで伝えること(そのまま使える型)3つが決まったら、候補の人との最初の打ち合わせで、次の順に伝えてみてください。15分ほどで、相手が「自分に何ができそうか」を判断できる材料がそろいます。いまの状況:(例)創業50年の和菓子店。来店のお客さまは地元の常連さんが中心で、贈答の注文はここ数年ほぼ横ばい3ヶ月後になっていたい状態:(例)ギフトの見せ方が決まり、スタッフが迷わずInstagramに投稿できているお願いしたいこと/社内でやること:(例)方針と投稿の型づくりをお願いしたい。撮影と投稿はスタッフが担当時間とお金の目安:(例)月10時間ほど、月2回の定例。報酬は相談して決めたい見る数字:(例)ギフトの注文数と、プロフィールへのアクセス数これまで試したこと:(例)チラシを配ったが、反応がわからなかった最後の「これまで試したこと」は、うまくいかなかったことも含めて伝えるのがおすすめです。経験のある人ほど、そこから次の一手を考えてくれます。反対に、相手からは「似た規模の会社で、どんな関わり方をしてきたか」「月の時間で何ができそうか」を聞いておくと、お互いの期待をすり合わせやすくなります。よくあるつまずきと、その対策準備をしていても、始めてみると思わぬところでつまずくことがあります。よくあるものと対策をまとめました。提案は来るけれど、社内で誰も動けない:①で「動かす」担当を決めていないことが多いです。提案を受け取る人と、実行する人を最初に決めておきましょう定例が「近況報告」で終わってしまう:毎回、③で決めた数字を最初に確認し、「次の2週間でやること」を1つ決めて終える流れにすると、話が前に進みます社長の「やっぱりこうしたい」で方針がぶれる:方針を変えたいときは、定例の場で理由と一緒に伝えるルールにしておくと、相手も動きやすくなります契約が終わったら、何も残らなかった:作った資料・文章の型・数字の記録は、会社のフォルダに置いてもらうよう最初にお願いしておきましょうよくある質問Q. 副業人材と、代理店(外注)の違いは何ですか?A. 代理店は、やることが決まっている仕事を、チームでまとまった量こなすのが得意です。副業人材は、少ない時間で方針づくりや相談相手として関わる形が多く、「何をやるべきかを一緒に考えたい」段階の会社に向いています。どちらか一方ではなく、方針は副業人材と考え、量の多い作業は外注する、という組み合わせもあります。Q. どこで副業のマーケ人材を探せばいいですか?A. 副業人材のマッチングサービスのほか、地元の知り合いや取引先からの紹介、自治体や支援機関の人材マッチングの取り組みなどがあります。どの経路でも、この記事の3つ(任せる範囲・時間とお金・見る数字)を先に書き出しておくと、候補の人と話すときに条件が伝わりやすくなります。Q. 最初から長く契約したほうがいいですか?A. まずは3ヶ月など、区切りのある期間で始めるのがおすすめです。3ヶ月たったところで③の数字を一緒に振り返り、続けるか、お願いする範囲を変えるかを決めると、お互いに無理のない形で続けられます。まとめ副業のマーケ人材は、社内に担当を置けない会社にとって、経験者の目を少ない時間から借りられる心強い選択肢です。うまくいくかどうかは、頼む前の準備で大きく変わります。任せる範囲:「考える・つくる・動かす」のどこをお願いし、社内の誰が何をやるか時間とお金:月に何時間関わってもらい、いくら・いつ払うか。業務委託なら条件を書面で見る数字:3ヶ月後に何を見て判断するか。2〜3個にしぼるこの3つを1枚の紙に書き出しておくだけで、候補の人との最初の打ち合わせがぐっと具体的になります。まずは「最初の3ヶ月でお願いしたいこと」を書き出すところから始めてみてください。