地方の取引先を訪ねた帰りに、「また来たい」と思える町がひとつある。社員がプライベートで通っている地域が、いつの間にか会社の新しいつながりになっている。そんな「住んではいないけれど、関わり続けている人」のことを、関係人口と呼びます。人口が減っていくなかで、国も企業も、この関係人口に注目しはじめています。この記事のポイント関係人口は、移住した「定住人口」でも、観光で訪れる「交流人口」でもない、地域と続けて関わる人のことです国の調査では、地域を訪れて関わっている人は全国で約1,800万人と推計されていて、国も「10年で実人数1,000万人」を目標にしています企業が関わるなら、副業・研修・人材派遣・拠点づくりなど入り口はいくつもあり、「小さく続ける」設計がいちばんの近道です関係人口とは?移住でも観光でもない「続けて関わる人」関係人口は、総務省や国土交通省が地方創生の文脈で使ってきた言葉です。ざっくり言うと、その地域に住んではいないけれど、仕事・趣味・応援などを通じて、続けて関わっている人のことです。これまで地域の人口は、住んでいる人(定住人口)と、観光などで一時的に訪れる人(交流人口)の2つで語られることがほとんどでした。関係人口は、そのあいだにいる人たちに名前をつけたものです。毎年お祭りの運営を手伝いに来る人、ふるさと納税で同じ町を応援し続ける人、地方の会社を副業で手伝う人などが当てはまります。ポイントは「回数」や「深さ」よりも、関わりが続いていることです。観光で一度訪れた人が、気に入って毎年通うようになり、やがて地域の仕事を手伝う。関係人口は、そうした段階的な関わりの途中にいる人たち、と考えるとわかりやすくなります。なぜ今、関係人口が注目されているのか全国で約1,800万人。ただ、言葉はまだ知られていない国土交通省が2021年に公表したアンケート調査では、18歳以上の人のうち、特定の地域を訪れて関わっている「関係人口(訪問系)」は約2割弱、推計で約1,827万人とされています。三大都市圏に住む人の18.4%、それ以外の地域に住む人の16.3%が当てはまる計算です。一方で、前年の同じ調査では、関係人口という言葉の「定義や考え方などを概ね知っている」人は2.8%にとどまっていました。実際には多くの人が地域と関わっているのに、本人も地域も、それを「関係人口」として意識していない。ここに、企業が関わる余地があります。国の目標は「10年で1,000万人」2025年6月に閣議決定された地方創生2.0の基本構想などでは、住んでいる場所以外の地域に続けて関わる人を登録する「ふるさと住民登録制度」をつくる方針が示されました。あわせて、関係人口を今後10年間で実人数1,000万人、延べ1億人にする目標も掲げられています。人が減っていく地域にとって、移住者だけを増やすのは簡単ではありません。「住んでいなくても、関わってくれる人」を増やすことは、担い手や応援してくれる人を確保する現実的な方法として、これからますます大事になっていきそうです。企業が地域と関わるための、5つの入り口関係人口は個人の話に見えますが、企業が「関わる人を送り出す側」「関わる場をつくる側」になることもできます。入り口は大きく5つあります。1. 社員の副業・プロボノで関わる地方の中小企業のマーケティングや新規事業を、社員が副業やプロボノで手伝う形です。会社としては始めやすく、社員にとっても学びが大きい入り口です。地方の会社にとっては、自社にない経験を持つ人と出会える機会になります。2. 研修・ワーケーションで地域に通う新任管理職研修や新規事業研修を地域で行い、地域の課題をテーマにする形です。一度きりのイベントで終わらせず、同じ地域に毎年通うと、関係が少しずつ積み上がっていきます。3. 自治体に人材を送る(地域活性化起業人)総務省の「地域活性化起業人」は、企業の社員が6か月〜3年、自治体で地域の仕事に取り組む制度です。受け入れる自治体の経費には特別交付税の措置があり、2024年度は企業派遣型と副業型をあわせて871人が活用しています。副業のまま関われる「副業型」もあり、本業を続けながら地域に関わる道もあります。4. サテライトオフィス・拠点をつくる地方に拠点を置き、社員が行き来する形です。拠点があると、地域の人との日常的なつながりが生まれやすくなります。一方で、拠点をつくって終わりにならないよう、地域とどう関わるかを先に決めておくことが大切になります。5. 地域と一緒に商品・事業をつくる地域の素材や技術を使った商品開発、地域の会社との共同事業など、本業を通じて関わる形です。続けやすさという点では、本業とつながる関わり方がいちばん強いと言えます。架空の例で見る、関係人口が育っていく流れここでは、架空の会社を例に、関わりがどう育っていくかを見てみます(内容はすべて架空です)。東京の食品メーカー(架空):新規事業研修で、ある港町の水産加工会社を訪問。研修後も参加者のうち3人が副業で商品の伝え方を手伝い、2年目には共同で詰め合わせ商品を開発した。IT企業(架空):社員のワーケーション先として同じ町を3年続けて選ぶ。地元の高校で出前授業をするようになり、卒業生がインターンに来るようになった。地方の老舗旅館(架空・受け入れる側):都市部の副業人材2人とオンラインで月2回の打ち合わせを続け、予約サイトの紹介文や季節のプランを一緒に見直していった。どの例も、最初から大きな成果を狙っていません。小さな関わりを、同じ相手と続けた結果として、事業や人のつながりが生まれています。関わりを続けるための、最初の1年の進め方関係人口づくりでよくあるのが、「イベントをやったら盛り上がったけれど、そのあと何も続かなかった」というケースです。最初の1年は、成果よりも「次も行く理由」をつくることを目標にすると、無理なく続けやすくなります。始める前に決めておきたいこと(チェックリスト)どの地域と関わるか(社員の出身地・取引先・拠点など、すでに縁のある場所から選ぶ)地域側の窓口は誰か(自治体・地域の会社・まちづくりの団体など)会社として何を持っていくか(人の時間・知見・商品・場所など)何年続けるつもりか(最低でも3年くらいを目安に)社内で誰が担当し、どこに報告するか見ておきたい数字の目安関係人口の取り組みは、売上だけでは測りにくいものです。次のような数字を、毎年同じように記録しておくと、関わりが育っているかどうかが見えてきます。関わった人の数と、2回目以上の人の割合:1回きりの人ばかりなら、続ける仕掛けが足りていないサインです地域側から声がかかった回数:相談や依頼が地域から来るようになれば、関係ができてきた証拠です生まれた共同の取り組みの数:商品・イベント・発信など、一緒に形にしたものよくあるつまずきと対策地域に「お客さま」扱いされてしまう:最初の訪問で、地域の困りごとを聞く時間を必ずとる。会社が持っていけるものを1つ、具体的に伝える。担当者が異動して止まる:担当を2人以上にし、毎年の記録を残しておく。社内で「何のためにやるのか」と聞かれる:サステナビリティの方針や人材育成の目標と結びつけて説明し、上の数字で報告する。関わりは「伝えること」で育っていくPlayBlueは、地元・埼玉でローカルメディアを運営してきました。地域の人やお店を紹介しているうちに、町の外から記事を読んで訪れる人や、イベントに足を運んでくれる人が少しずつ増えていきました。そのとき感じたのは、関係人口は「呼び込む」ものというより、地域のことを伝え続けるうちに、自然と育っていくものだということです。企業の取り組みも同じです。地域で何をしているか、関わった社員が何を感じたかを、社内外に言葉にして伝える。それが次に関わる人を呼び、地域の側にとっても「この会社と一緒にやりたい」と思える理由になります。よくある質問Q. 関係人口と交流人口は、何が違いますか?A. 交流人口は観光などで一時的に訪れる人、関係人口は住んでいなくても地域と続けて関わる人です。同じ人が、観光をきっかけに関係人口になっていくこともあります。違いは「続いているかどうか」と考えるとわかりやすくなります。Q. 企業が関係人口に取り組むメリットは何ですか?A. 社員の学びや人材育成、新しい事業や商品のきっかけ、サステナビリティの取り組みとしての発信などがあります。地域にとっても、担い手や外の知見に出会える機会になるため、お互いにとって意味のある関わりになりやすいのが特徴です。Q. 小さく始めるなら、何からがいいですか?A. 社員の出身地や取引先など、すでに縁のある地域を1つ選び、その地域の会社や自治体の困りごとを聞くところから始めるのがおすすめです。研修や副業など、続けやすい形を1つ決めて、まずは1年続けてみてはいかがでしょうか。まとめ関係人口は、移住でも観光でもない、地域と続けて関わる人のことです。全国で約1,800万人がすでに地域と関わっていると推計され、国も「10年で1,000万人」を目標に掲げています。企業にとっては、副業・研修・人材派遣・拠点・共同事業といった入り口があり、どれも「小さく、同じ相手と続ける」ことがいちばんの近道です。まずは縁のある地域を1つ選び、関わる理由を言葉にするところから始めてみてください。大企業と地域の取り組みや、新規事業・サステナビリティの伝え方について考えたいときは、PlayBlueのお問い合わせからお気軽にご連絡ください。新規事業の言葉と3ヶ月の作戦づくりには、TSUMUGU for Startup も使えます。