地域の特性を活かして“優しさの輪”が循環する街へ。「LOCAL OMO MEDIA」を通じてPlayBlue 青野祐治が実現したい世界自身が受けた感動をより多くの人に届けたいという純粋な好奇心と、伝統文化を残していきたいという使命感から、自宅に眠る洋服と全国の染め工房を結ぶアップサイクルプラットフォーム「somete」を2021年に立ち上げたPlayBlueの青野祐治。「somete」の活動を通して衣類分野の社会課題に興味を持ち、2022年には“服の循環を生み出す”ことを目的に、「Color(服の染め直し)」「Pass(服の回収)」「Trade(服の交換)」を軸としたアパレルロス削減を目指す、『まちクローゼット』を立ち上げた。実際の活動として期間限定ショップをオープンし、「洋服の物々交換」や「染め直し体験」などのサービスを提供。その経験から不要となったものを捨てるのではなく、『循環』させることの大切さとそこから生まれる豊かさを実感。Webメディアと地域イベントが融合する、LOCAL OMO MEDIA「OMIYA DAIMON」では企画立案に携わり、メディアを通してさまざまな方法で大宮の街の魅力を発信すると同時に、地域の特性を活かした形での「循環」を生み出す仕組み作りを考えている。今回はPlayBlueの青野に「somete」と「まちクローゼット」の活動を通して感じたことや、『OMIYA DAIMON』を通じて実現したいことを中心に話を聞いた。目次自宅に眠る洋服と全国の染め工房を結ぶアップサイクルプラットフォーム「somete」を立ち上げるまで── まずは『somete』を始めたきっかけを教えてもらえますか?青野 : 元々、会社員をしながら、複業として出身地である越谷で活動されている魅力的な人やお店を取り上げる「KOSHIGAYAZINE」というローカルメディアを創刊・運営していたんです。そのときに藍染工房をされている方に取材をする機会があって。「藍染め」が時代の変化とともに存続の危機に面しているというお話しをお伺いしたんですよね。それからずっとそのお話が頭に残っていて。ある時、誕生日にもらってお気に入りだけど、襟元が黄ばんで着なくなっていたシャツのことをふと思い出して、取材した藍染め職人の方に藍染めを頼んでみたんです。すると、すごく素敵に藍色に染まったシャツが帰ってきたことに、とても感動して。ある種のサプライズ体験に似た感覚を持ったんです。この体験をもっと多くの方にしてもらい、結果的に伝統文化存続の一助になれたらと思ったことがきっかけです。── 自身が受けた感動をより多くの人に届けたいという純粋な好奇心と、伝統文化を残していきたいという使命感から始まったのですね。『somete』のサービス内容を考えていった経緯をお伺いできますか?青野 :はじめは、藍染めに絞ったプロダクトやサービス開発を考えていたのですが、全国には「黒紋付き染め」などの伝統工芸や廃棄苺を使った「いちご染め」、静岡の廃棄茶葉を使用した「お茶染め」、廃棄される珈琲の豆かすを使用した「珈琲染め」など、さまざまな方法で「染め」を行う工房があることを知りました。お客様に、より多くの選択肢から好みの「染め」を選んで欲しいという想いからプラットフォーム化してサービスをスタートしています。── プラットフォーム化することで、利用者は様々な選択肢から選ぶことができ、工房は多くの人に認知してもらうことができるのは、とても大きなメリットですね。実際に始めてみて、サービスへの反応はいかがでしたか?青野 : 幅広い層の方に利用されていますが、特に20代〜30代の女性を中心にご好評いただいておりまして、これまでになかった「コンテンツ体験」を求めている方、SDGsの文脈から興味を持っている方がサービスを利用してくださっている印象です。アパレルロスの削減と地域産業の再活性化をするために── 近年、SDGsへの関心が高まり環境に配慮される方が増えたことは「somete」にとって追い風になっていそうですね。青野 : そうですね。私自身『somete』を始めるにあたって衣類分野の社会課題や環境問題に興味を持ち、学ぶ中で「アパレルロス」という問題を知りました。日本では年間約48万トンの服が廃棄されていて、大型トラック約130台分の服が1日に処分されているんですよね。クローゼットの中で眠っている服が1人あたり25枚もあると言われています。『somete』でユーザーインタビューをしていても、使用していない服を染め直しまではいかなくとも、回収してもらえるのであれば無料で寄付したいというお声を結構いただきまして。そのようなお声をきっかけにして、“服の循環を生み出す”ことを目的に、「Color(服の染め直し)」「Pass(服の回収)」「Trade(服の交換)」を軸にアパレルロス削減を目指す、『まちクローゼット(以下、まちクロッ)』を立ち上げました。実際の活動としては『株式会社OPA』との共創により2022年7月23日〜9月25日に高崎オーパにて期間限定ショップをオープンし、「服の物々交換」やビニールプールを使った「染め直し体験」などのさまざまなイベントを通して『まちクロッ』の活動に触れていただけたかなと感じています。── アパレルロス削減のためには「染め直し」だけではなく、「回収と交換」という観点からのアプローチにも取り組む必要性に気づいたと。『somete』と『まちクロッ』を通してアパレルロスの削減と地域産業の再活性化という二つの社会課題にアプローチされているのですね。今後の展開が楽しみです。青野 : ありがとうございます。someteやまちクロッの活動を通して、「循環」することの大切さとそこから生まれる豊かさを実感したんですよね。その経験が現在、企画立案に携わらせていただいていた LOCAL OMO MEDIA「OOMIYA DAIMON」での活動にもつながっている部分があります。── そうなのですね。ぜひその部分もお伺いしたいのですが、まずは「OMIYA DAIMON」のコンセプトや活動内容を教えていただけますでしょうか?青野 : 「OMIYA DAIMON」ではオンライン・オフラインを融合させて、埼玉県にある大宮の"魅力"を届けていきます。具体的には、今回のようなインタビュー記事で「人」や「お店」の魅力を紹介し、それにとどまらず紹介した人に実際に会えたり、商品に触れ合えるイベントを開催していけたらなと。その結果、大宮に愛着を持つ人、大宮を訪れたいと思う人を増やせるのではないかと考えています。そして今後、街の発展を考えた時に地域内でいかに資源の循環を起こせるか、ロスを減らせるかは見逃せないテーマだと思っていて。そういった活動をより身近に感じてもらえるよう、記事やイベントでサスティナブルな活動をされている方も紹介していきたいと考えているんです。地域の特性を活かした循環する仕組み作り── たしかに、街の発展を考えた時に見逃せないテーマですね。具体的に大宮ではどのような活動が出来ると考えていますか?青野 : 大宮という街の特性を考えると、「一宮通り」を中心に多くの古着屋さんが立ち並び、豊かな自然が溢れる見沼田んぼを中心に多くの農家さんが作物を作っていらっしゃいます。あくまで現時点での理想論ですが、古着屋さんで不要衣類の回収を行い、染め直しをして再度販売することで「アパレルロス」の削減に繋げたり、農家さんで廃棄されてしまう作物を集めて、それらを使用した料理を提供するレストランを運営することで、「フードロス」の削減に繋げることが出来るのではないかと考えています。感銘を受けたオランダ、アムステルダムのまちづくり──どちらも地域ならではの取り組みですね。そういった取り組みのアイディアはどのように生まれたのでしょうか。青野 : 以前、ある雑誌でオランダのアムステルダムのまちづくりに関しての記事を読んだ時に、先ほどお話ししたフードロスの取り組みを紹介する記事が掲載されていて感銘を受けたんですよね。また、アムステルダムは「水の都」と言われていて運河が街中を流れているのですが、観光の一環として運河に捨てられたペットボトルを釣る有料のツアーを開催し、そのペットボトルをリサイクルして船を作っているそうで。街の特性を活かして、資源の循環を起こしながら利益やエンタメ性を生む仕組みに感動しました。──素晴らしい仕組みですね。 古着屋さんや農家さんが多い大宮ならではの特性を活かした循環型の取り組みをしていきたいと。青野 : そうですね。資源の循環を一人ひとりが意識することによって、地域のことが自分ごと化し、同じ地域に住んでいる人を思いやる気持ちが強くなると思うんですよね。その結果、地域で「優しさの輪」が循環するようにしていきたいなと考えています。そのためにも、まずは現在取り組んでいるインタビュー記事の作成やイベントの開催を積み重ねながら、どのような取り組みがこの地域にとって良いのかを考えていきたいです。──実際に行動を積み重ねることで、より大宮に合った取り組みが見えてきそうですね。本日はありがとうございました。