ローカルSDGsで地域から持続可能な世界を創る2015年、国連サミットで「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。SDGsは、2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。SDGsの達成には、国家レベルの取り組みだけでなく、地域レベルの参画が不可欠です。なぜなら、SDGsが掲げる課題の多くが、地域社会に密接に関連しているからです。そこで注目されるのが「ローカルSDGs」という考え方です。本記事では、ローカルSDGsの概要や先進事例、推進方策などを詳しく解説します。地域の視点からSDGsを捉え直し、持続可能な社会の実現に向けたヒントを探っていきましょう。ローカルSDGsの概要ローカルSDGsとは、SDGsを地域レベルで実践し、地域の持続可能性を高めていくための取り組みを指します。自治体、企業、市民団体など、地域のステークホルダーが連携し、地域の特性や資源を活かしながらSDGsの達成を目指します。ローカルSDGsの目的は、大きく以下の3つに集約されます。地域課題の解決地域経済の活性化地域の魅力向上これらの目的を達成するため、ローカルSDGsでは環境、社会、経済の三側面から統合的にアプローチします。地域の自然環境の保全、社会的包摂の促進、地域経済の循環などを同時に進めることで、地域の持続可能性を高めていくのです。国連も、SDGsの達成におけるローカルレベルの重要性を認識しています。2018年、国連は「SDGs推進のための自治体行動計画」を策定し、ローカルSDGsの推進を呼びかけました。各国政府に対しても、自治体によるSDGsの取り組みを支援するよう求めています。ローカルSDGsの取り組み事例ローカルSDGsは、すでに世界各地で実践されています。日本国内でも、先進的な自治体や企業、市民団体による取り組みが数多く見られます。ここでは、その一部を紹介しましょう。【自治体の取り組み事例】北海道ニセコ町:「ニセコ町SDGs未来都市計画」を策定し、環境・経済・社会の統合的発展を目指す。神奈川県小田原市:「小田原市SDGs推進計画」を策定し、地域エネルギーの活用や地産地消の促進などに取り組む。熊本県小国町:「オーガニックタウンこぐに」を掲げ、有機農業を軸とした地域づくりを進める。【企業の取り組み事例】パタゴニア:環境保全を重視した事業運営を行い、地域コミュニティの支援にも積極的に取り組む。イオン:「イオンのecoプロジェクト」を通じて、地域の環境保全活動を支援。サラヤ:「海の森づくり」プロジェクトを展開し、地域の海岸線の保全に貢献。【市民団体の取り組み事例】北海道下川町の「森の生活」:地域の森林資源を活用した sustainable な暮らしを実践。長野県飯田市の「おひさま進歩エネルギー」:市民出資による再生可能エネルギーの普及に取り組む。徳島県上勝町の「ZERO WASTE ACADEMY」:ゼロ・ウェイストの理念を広め、持続可能な地域づくりを推進。【教育機関の取り組み事例】岡山大学:「SDGs推進センター」を設置し、地域と連携したSDGs教育や研究を実施。立教大学:「ESD研究所」を設立し、ローカルSDGsに関する研究や人材育成に取り組む。中部大学:「SDGsエコマップ」の作成を通じて、地域のSDGs実践度を可視化。これらの事例から見えてくるのは、ローカルSDGsが地域の多様な主体の協働によって進められているということです。それぞれの立場や強みを活かしながら、地域の未来を共に創っていく。そうした営みがローカルSDGsの本質だと言えるでしょう。ローカルSDGsを推進するための方策ローカルSDGsをさらに推進していくためには、どのような方策が求められるでしょうか。ここでは、4つの視点から考えてみます。【ステークホルダー間の連携】 ローカルSDGsでは、自治体、企業、市民団体、教育機関など、地域の多様なステークホルダーが連携することが不可欠です。お互いの取り組みを共有し、強みを持ち寄ることで、相乗効果を生み出すことができるからです。連携のプラットフォームづくりや、対話の場の設定が重要になります。【地域資源の活用】 ローカルSDGsでは、地域の自然資源や文化資源、人的資源などを最大限に活用することが求められます。地域の資源を見直し、新たな価値を創造することで、地域の自立性や持続可能性を高めていくことができるからです。地域資源の掘り起こしやブランディングが鍵となります。【人材育成とキャパシティビルディング】 ローカルSDGsを担う人材の育成も重要な課題です。SDGsの理念を理解し、地域課題の解決に取り組む人材を地域内で育てていく必要があります。また、自治体職員や市民団体のスタッフなど、ローカルSDGsの実践者の能力向上(キャパシティビルディング)も欠かせません。研修機会の提供や、ノウハウの共有が求められます。【モニタリングと評価】 ローカルSDGsの取り組みを持続的に改善していくためには、定期的なモニタリングと評価が必要です。取り組みの進捗状況を把握し、課題を特定することで、より効果的な施策につなげることができるからです。指標の設定や、PDCAサイクルの導入が有効でしょう。こうした方策を通じて、ローカルSDGsを地域に根づかせ、持続可能な地域社会を実現していくことが期待されています。ローカルSDGsの課題と展望一方で、ローカルSDGsの推進には、いくつかの課題も指摘されています。【自治体の課題】首長や職員のSDGsに対する理解・関心の差予算や人員の制約部局間の縦割り意識【企業の課題】SDGsのビジネス化の難しさ短期的な利益追求との両立サプライチェーン全体の巻き込み【市民の課題】SDGsの認知度の低さ行動変容の難しさ地域活動への参加障壁これらの課題を一つひとつ克服していくことが、ローカルSDGsの実効性を高めるために不可欠です。 同時に、ローカルSDGsの先進事例から学び、各地域の特性に合ったアプローチを模索していくことも求められます。ローカルSDGsは、まだ発展途上の取り組みだと言えます。しかし、その可能性は無限大です。 地域の叡智を結集し、試行錯誤を重ねながら、持続可能な地域社会のモデルを創っていく。 そうした地域の営みが、SDGsの理念を地に足のついたものにしていくのだと期待されています。地域からSDGsを実現するために最後に、地域の視点からSDGsを実現するために、私たちに何ができるのかを考えてみましょう。【自治体に求められる役割】SDGsの理念を市政に反映する多様なステークホルダーとの連携を促進するSDGsの達成状況を可視化し、情報発信する【企業に求められる役割】事業活動とSDGsを連動させる地域のSDGs活動に積極的に参画するサプライチェーン全体でSDGsに取り組む【市民に求められる役割】SDGsを自分ごと化し、行動につなげる地域の SDGs 活動に主体的に参加するSDGs の担い手として、次世代を巻き込むローカルSDGsは、一人ひとりの意識と行動の変容から始まります。 私たち一人ひとりが、地域の一員としての自覚を持ち、できることから実践していく。 そうした一人ひとりの思いが、地域を、そして世界を変えていくのだと信じています。まとめ本記事では、ローカルSDGsについて、その概要や意義、先進事例、推進方策などを詳しく解説してきました。 ローカルSDGsは、地域の多様な主体が連携し、地域の特性を活かしてSDGsを実践する取り組みです。 環境・社会・経済の統合的向上を通じて、地域の持続可能性を高めていくことを目指しています。SDGsの達成に向けて、ローカルレベルの取り組みがますます重要になっています。 なぜなら、SDGsが掲げるグローバルな目標を、地域の現場で具体化していくことが不可欠だからです。 地域の課題解決と持続可能な発展を同時に実現していく。それがローカルSDGsの本質的な意義だと言えるでしょう。ローカルSDGsは、私たち一人ひとりの行動から始まります。 地域の未来を創るのは、他でもない私たち自身です。 地域に根ざし、地域とともに歩むSDGsの取り組みを通じて、誰一人取り残さない持続可能な社会を実現していく。 そのために、私たちにできることを、今日から実践していきましょう。