「商品には自信がある。でも、うまく伝わっていない気がする」。地域の会社やお店で、とてもよく聞くお悩みです。品質も、つくり手のこだわりもあるのに、いざ紹介しようとすると「こだわりの◯◯」「ていねいに作っています」のような、どこかで見た言葉になってしまう。この記事では、いい商品の良さを、お客さまに届く言葉にするための考え方と手順をまとめました。この記事のポイント伝わらない原因の多くは、「特徴(事実)」だけを書いて、「お客さまにとっての意味」まで書けていないことです魅力は、作り手の頭の中より、常連さんの言葉や買ったあとの使われ方の中に見つかります「ひとこと」と「3行の紹介文」の2つをつくっておくと、SNS・サイト・チラシに使い回せますいい商品なのに伝わらないのは、「意味」まで書けていないから伝わらない紹介文には、共通点があります。それは、商品の「特徴」は書いてあるのに、それが買う人にとって何をもたらすのかが書かれていないことです。たとえば「北海道産の小豆を使っています」は特徴です。間違いではありませんが、読んだ人は「そうなんだ」で終わってしまいます。同じような書き方をしているお店はほかにもあるので、比べられて、値段で選ばれてしまうことも少なくありません。そこで、特徴を「良さ」に、良さを「その人にとっての意味」に、3段で言いかえていきます。「甘さが強すぎず、あと味が軽い(良さ)」から、「食後でも、ひとつ食べきれる(意味)」へ。ここまで書くと、読んだ人が自分の場面を思い浮かべやすくなります。特徴は大事な裏づけなので、消す必要はありません。意味を先に、特徴をあとに添える、くらいのバランスがちょうどよいです。魅力は、作り手の「当たり前」の中にある自分たちの良さを考えるとき、つい「ほかにない特別なこと」を探してしまいがちです。でも実際には、作り手が当たり前に続けていることこそ、お客さまにとっては魅力だった、ということがよくあります。毎朝その日の分だけ仕込む、注文のたびに使う人の話を聞く、修理を断らない。本人にとっては普通のことほど、言葉にされずに埋もれています。見つけるときは、ひとりで考えるより、問いを使って掘り出すほうが早く進みます。いちばん効くのは、常連さんに聞くこと5つの問いのうち、まず試してほしいのは1つ目です。「なぜうちを選んでくれているんですか」と、常連さんに直接聞いてみてください。レジでのひとこと、配達のついで、アンケート用紙の自由記入欄でもかまいません。作り手が思ってもみなかった言葉が返ってくることがあります。そして、その言葉はそのまま紹介文に使えることが多いのです。聞いた言葉は、そのまま書き留めておく聞いた言葉は、きれいに言いかえずに、そのままメモしておきます。「子どもが勝手に食べちゃう」「贈ると、毎回お礼の電話が来る」のような話し言葉には、具体的な場面が入っています。5人ほどに聞くと、似た言葉がいくつか重なってくるはずです。重なった言葉が、いちばん伝えるべき魅力の候補です。場面別の例:特徴から意味へ(架空の例です)業種ごとに、3段の言いかえを並べてみます。いずれも説明のための架空の例です。和菓子店:毎朝その日の分だけ小豆を炊く(特徴)→ あと味が軽い(良さ)→ 食後でも、ひとつ食べきれる(意味)工務店:地元の杉を職人が刻む(特徴)→ においと手ざわりがやわらかい(良さ)→ 子どもが床で寝転んでも気持ちいい(意味)町の製造業(BtoC向けの新商品):工場の端材を活かした小物(特徴)→ ひとつずつ表情が違う(良さ)→ 贈ったとき「どこで買ったの?」と話が生まれる(意味)農家の直売:収穫したその日に発送(特徴)→ 香りが立っている(良さ)→ 箱を開けた瞬間に、家族が集まってくる(意味)意味の部分には、「誰が」「どんな場面で」が入っていると伝わりやすくなります。反対に「安心」「こだわり」「上質」のような抽象的な言葉だけで終わっていたら、もう一段、場面に落としてみてください。そのまま使える、紹介文の型魅力の候補が見つかったら、紹介文にまとめます。最初は「ひとこと」と「3行」の2つだけで十分です。ひとこと:〈誰〉の〈場面〉に、〈意味〉を。20字前後を目安にします。SNSのプロフィールの1行目や、店頭の看板、名刺の裏などに使えます。いくつか案を出して、声に出して読んでみると、言いやすいものが自然と残ります。3行:何をしているか → 特徴 → 意味1行目で何のお店・会社か、2行目で特徴(事実)、3行目でその人にとっての意味を書きます。ホームページのトップ、オンラインショップの説明文、展示会の資料の冒頭など、少し長く紹介する場所で使えます。同じ魅力を、場所ごとに言いかえるひとことと3行ができたら、使う場所に合わせて少しずつ形を変えます。中身(伝える魅力)は同じまま、長さと順番だけを変えるのがコツです。SNSの投稿:1行目に「意味」を置きます。流し見されるので、「食後でも、ひとつ食べきれる和菓子です」のように、場面が浮かぶ言葉から始めます。特徴は2行目以降や写真で見せます。ホームページ:3行の紹介文をトップに置き、その下に特徴の裏づけ(素材・つくり方・つくり手)を並べます。検索から来た人は「本当にそうなのか」を確かめたいので、事実をていねいに書く場所です。店頭・POP:ひとことだけで十分です。文字が多いと読まれないので、手に取ったあとに店員さんが話せるよう、続きはスタッフの口頭に任せます。取引先向けの資料:意味に加えて「どんなお客さまに選ばれているか」を添えます。卸先やバイヤーは、自分の売り場で売れるかどうかを見ているからです。場所ごとにバラバラの言葉を考えるより、元になる言葉を1つ決めて言いかえるほうが、時間もかからず、会社としての印象もそろいます。AIに手伝ってもらうときのコツ紹介文のたたき台づくりに、AIを使う会社も増えています。そのときは「和菓子店の紹介文を書いて」と頼むより、常連さんから聞いた言葉や、作り手の当たり前を一緒に渡すのがポイントです。材料が具体的なほど、どこかで見た言葉ではなく、その会社らしい言葉が出てきます。出てきた案は、最後に自分たちで声に出して読み、言いやすいものを選びます。よくあるつまずきと、その対策全部を伝えようとして、何も残らない:伝えたいことが多いほど、ひとつも覚えてもらえなくなります。紹介文で言う魅力は1つ、多くても3つまでにしぼります。社内の言葉のまま書いてしまう:「◯◯製法」「△△仕上げ」のような業界の言葉は、お客さまには伝わりにくいことがあります。家族や友人に読んでもらい、聞き返されたところを言いかえます。一度つくったら、そのままにしてしまう:紹介文は、使いながら育てるものです。反応がよかった投稿や、問い合わせで言われた言葉を見ながら、3ヶ月に一度くらい見直すと、少しずつ届く言葉になっていきます。伝わったかどうかは、3つの数字で見る言葉を変えたら、反応が変わったかどうかも見ておきます。細かい分析は要りません。次の3つのうち、測りやすいものを1つか2つ選んで、変える前と後で比べてみてください。聞かれる回数:店頭や電話で「これは何ですか」と聞かれる回数。意味が伝わると、質問の中身も具体的になっていきます。保存・シェアの数:Instagramなどの保存数。「あとで買おう」「誰かに教えよう」と思われたサインです。言葉の引用:お客さまのクチコミやメッセージに、自分たちの紹介文の言葉が出てくるかどうか。出てきたら、その言葉は届いています。よくある質問Q. 特徴がほかの会社とほとんど同じ場合は、どうすればいいですか?A. 特徴が似ていても、「誰の、どんな場面のために」は会社ごとに違います。いちばん喜んでくれているお客さまを1人思い浮かべ、その人の場面から意味を書いてみてください。届けたい相手をしぼるほど、言葉は似なくなります。Q. キャッチコピーは、プロに頼まないと作れませんか?A. 最初のひとことは、自分たちで作ったもので十分です。お客さまの言葉から作ったひとことは、それだけで説得力があります。プロやAIの力を借りるのは、たたき台ができてから、もう一段磨きたいときでも遅くありません。Q. 紹介文はどれくらいの頻度で見直せばいいですか?A. 3ヶ月に一度くらいが目安です。季節の商品が入れ替わるタイミングや、新しい売り場・販路を始めるときにも見直すと、その時々のお客さまに合った言葉にそろえられます。まとめいい商品なのに伝わらないときは、商品の良さが足りないのではなく、良さを「その人にとっての意味」まで言葉にできていないことがほとんどです。常連さんに聞き、作り手の当たり前を掘り出し、特徴を3段で言いかえる。まずは「ひとこと」と「3行」をつくって、使いながら育ててみてください。