アップサイクルとは?|リサイクルとの違いと、世界・日本の事例、事業にするための4つの視点

古いものを、ただ使い続けるのではなく、前よりも魅力のある新しいものに生まれ変わらせる。「アップサイクル」という言葉は、ここ数年でずいぶん耳にするようになりました。けれど、リサイクルとどう違うのか、自分たちの事業でどう生かせるのかとなると、意外とはっきりしないものです。この記事では、アップサイクルの意味とリサイクル・リユースとの違い、国内外の事例、そして事業として続けるための考え方をまとめました。
アップサイクルは、元の形や素材を生かし、デザインや工夫で「前よりも価値の高いもの」にすることです
リサイクル(原料に戻す)やリユース(そのまま使う)と比べて、価値を上げるところに特徴があります
事業として続けるには、素材・デザイン・値段・届け方の4つを一緒に考えることが大切です
アップサイクルとは?
アップサイクル(upcycle)とは、使われなくなったものや、捨てられるはずだった素材に、デザインやアイデアで新しい価値を加え、別の新しい製品に生まれ変わらせることです。英語の「up(上へ)」と「cycle(循環)」を組み合わせた言葉で、「価値を上げながら循環させる」という意味が込められています。
たとえば、トラックの荷台を覆っていた幌(ほろ)をバッグにする、着なくなった服を染め直して、また着たい一着にする、といった取り組みがアップサイクルです。元の素材の味わいや背景を生かしながら、前よりも「欲しい」と思われるものに変えるところがポイントです。
アップサイクル・リサイクル・リユースの違い
似た言葉に、リサイクルとリユースがあります。どれも資源を大切に使うための考え方ですが、やることと価値の変わり方が違います。

どれが正しいというより、素材や事業に合わせて組み合わせるものです。アップサイクルは「価値を上げる」ところに特徴があります。
リサイクルは、ペットボトルを繊維に、古紙を再生紙にするように、いったん原料に戻して作り直します。たくさんの量を仕組みで回せる一方で、原料に戻す分のエネルギーがかかり、元より価値が下がることも少なくありません。リユースは、古着店やフリマアプリのように、そのままの形で次の人が使う方法です。
アップサイクルは、その中間にあるような考え方です。形や素材の個性を残したまま、デザインや手しごとで新しい価値をつけます。量を一気に回すのは得意ではありませんが、素材の背景やつくり手の物語ごと届けられるのが強みです。
なぜ今、アップサイクルが注目されているのか
背景のひとつが、ものを「つくって、使って、捨てる」流れへの見直しです。たとえば衣服について、環境省のサステナブルファッションのページでは、家庭から手放された衣服のうち、リユース・リサイクルされるのは約38%で、残りはごみとして出されていること、そして毎日、大型トラック約130台分の衣服が焼却・埋め立てされていることが紹介されています。
こうしたなかで、捨てられるはずだったものに新しい価値をつけるアップサイクルは、環境への負担を減らすだけでなく、ほかにない商品をつくる方法としても注目されています。素材ごとの取り組みは、廃棄物のアップサイクルや廃材のアップサイクル、コーヒーのアップサイクルの記事でも紹介しています。
アップサイクルの事例
トラックの幌を、世界で売れるバッグに:FREITAG(スイス)
アップサイクルの代表的なブランドとして知られるのが、スイスのFREITAG(フライターグ)です。1993年に兄弟で創業し、使い終わったトラックの幌、自転車のインナーチューブ、車のシートベルトを使ったバッグや財布をつくっています。2020年の時点で世界25か国に広がり、使わなくなったバッグを別の人のバッグと無料で交換できる仕組みや、店頭での修理など、つくったあとも長く使い続けるための取り組みも行っています(Business Insider Japan「急がば回れ、ハッピーも回れ!」持続可能なビジネスを支えるマニフェスト/マーカス・フライターグさん[後編])。
FREITAGから学べるのは、「環境にいい」だけでなく、一つひとつ柄が違う、丈夫で使いやすいといった、商品としての魅力が先に立っていることです。
着なくなった服を、染め直してもう一度:somete
PlayBlueが運営する、洋服の染め直しアップサイクルプラットフォーム「somete」も、アップサイクルの取り組みのひとつです。色あせたり、着る機会が減ったりした服を、全国の染め工房と一緒に染め直し、「また着たい」一着にしてお返ししています。服そのものは同じでも、色を変えるだけで、その人にとっての価値が大きく変わることを日々感じています。
たとえば、こんな会社
製材所:これまで捨てていた端材を、地元の作家と一緒に箸置きや小物にして、工場見学の来場者に販売する
酒蔵:仕込みで出る酒粕を、近くの菓子店と組んで焼き菓子にし、蔵の直売所と通販で届ける
アパレルの会社:店頭で売れ残った服や、お客さまから回収した服を、染め直しやリメイクで新しい商品にする
アップサイクルを事業にするときの4つの視点
アップサイクルは、思いついた作品をひとつつくるだけなら、始めやすい取り組みです。一方で、事業として続けようとすると、素材の集め方や値段のつけ方でつまずくことがよくあります。次の4つを一緒に考えておくと、続けやすくなります。

思いついた作品で終わらせず、続けられる事業にするには、素材・デザイン・値段・届け方の4つを一緒に考えます。
素材:量と品質をそろえられるか
アップサイクルの素材は、毎回同じ量・同じ品質で手に入るとは限りません。どこで、どれくらいの頻度で出るのか、洗浄や保管にどれくらい手間がかかるのかを、先に確かめておきましょう。
デザイン:「元は何だったか」が伝わるか
元の素材がわかることは、アップサイクルの大きな魅力です。素材の柄や傷、使われてきた跡を、あえて残すデザインにすると、背景の物語が伝わりやすくなります。
値段:手間まで入れて計算する
回収、洗浄、手作業など、アップサイクルは新しい素材を使うより手間がかかることが多いです。手間まで入れて原価を計算し、続けられる値段をつけましょう。
届け方:「環境にいい」の前に、商品としての良さを
「環境にいい」という説明だけでは、共感はされても、買う理由になりにくいことがあります。使いやすさや見た目など、まず商品として選ばれる理由を伝え、そのうえで背景の物語を添えると、手に取ってもらいやすくなります。誰に、何と言って届けるかを3ヶ月の流れで整理したいときは、地域の企業のためのマーケティング伴走AI「TSUMUGU for Local」も使えます。登録なしで、無料で試せます。
企業の取り組みを横に並べて見たいときは、サーキュラーエコノミーの企業事例まとめもあわせてどうぞ。
よくある質問
Q. アップサイクルとリメイクは、どう違いますか?
A. リメイクは、服や家具などを作り直すこと全般を指す言葉で、アップサイクルとかなり重なります。アップサイクルは、そのなかでも「前より価値を高める」「捨てられるはずだったものを生かす」という点に重きを置いた言い方です。
Q. アップサイクル商品は、なぜ値段が高くなりがちなのですか?
A. 素材を回収・洗浄したり、一点ずつ形の違う素材に合わせて手作業で加工したりと、新しい素材を使うより手間がかかることが多いためです。その手間や背景を、商品の説明で伝えることが大切です。
Q. 地域の企業でも、アップサイクルを始められますか?
A. はい。むしろ、地域の企業には、製造の過程で出る端材や副産物など、ほかにない素材があることが多いです。まずは社内で捨てているものを書き出し、近くの作り手やお店と組んで、小さく試してみるのがおすすめです。
まとめ
アップサイクルは、捨てられるはずだったものに、デザインや工夫で新しい価値をつけて生まれ変わらせる取り組みです。リサイクルやリユースと組み合わせながら、素材・デザイン・値段・届け方の4つを一緒に考えることで、思いつきで終わらない、続けられる事業になっていきます。まずは身の回りの「もったいない」を、ひとつ書き出すところから始めてみてください。










