企業版ふるさと納税とは? |税の優遇の先にある、企業と地域が一緒に事業をつくる入り口

「地域に貢献したいけれど、何から関わればいいのかわからない」。サステナビリティや地域との取り組みを任された担当の方から、よく聞く声です。寄附をするにしても、どの地域の、どんな事業を選べばいいのか。社内でどう説明すればいいのか。そんなときの入り口のひとつが、企業版ふるさと納税です。この記事では、制度のしくみと最近の動き、寄附先の選び方、寄附で終わらせない関わり方までを整理しました。
企業版ふるさと納税は、自治体の地方創生の事業に企業が寄附すると、最大で寄附額の約9割の税が軽くなる制度です(実質の負担は約1割)
寄附額は年々増えていて、2024年度は約631億円・1万8,457件と過去最高でした。お金だけでなく、社員を派遣する「人材派遣型」もあります
選ぶときは「税の優遇」より「自社の強みと地域の課題が重なる事業か」を先に見ると、寄附のあとも続く関わりになりやすくなります
目次
企業版ふるさと納税とは? 企業が地方創生の事業に寄附する制度
企業版ふるさと納税(正式には「地方創生応援税制」)は、国が認めた自治体の地方創生の事業に、企業が寄附をする制度です。個人のふるさと納税と名前は似ていますが、返礼品はありません。そのかわりに、税の優遇が大きく設けられています。
内閣府の制度の概要によると、寄附額のうち、損金算入で約3割、税額控除で最大6割、合わせて最大で約9割の税が軽くなります。たとえば1,000万円を寄附した場合、最大で約900万円の税が軽くなり、企業の実質の負担は約100万円です。

損金算入(約3割)と税額控除(最大6割)を合わせて、最大で約9割の税が軽くなり、企業の実質の負担は約1割です。
おもな決まりは、次のとおりです。
寄附できる金額:1回10万円から
寄附できない先:東京都、地方交付税の不交付団体のうち三大都市圏の既成市街地などにある市区町村、そして自社の本社がある自治体
対象になる事業:自治体が「地域再生計画」として国の認定を受けた事業
いつまで:いまの税の優遇は2027年度(令和9年度)までです(京都府の案内より)
本社のある地域には寄附できない、という点は意外と見落とされがちです。工場や支店、創業の地、社員の出身地など、本社以外で縁のある地域を思い浮かべてみると、寄附先の候補が見えてきます。
寄附額は8年で約80倍に。広がっている理由
企業版ふるさと納税は2016年度に始まりました。内閣府の寄附実績によると、1年目の寄附額は約7.5億円・517件でしたが、2024年度には約631億円・1万8,457件まで増えています。2025年9月の大臣会見では、寄附をした企業の数も8,464社と過去最高になったことが紹介されました。

2024年度は約631億円・1万8,457件で、過去最高でした(年度は西暦で表記)。
大きく伸びたのは2020年度からです。この年の制度の見直しで、今の「最大で約9割の税が軽くなる」形になったことが、きっかけの一つといわれています。あわせて、サステナビリティの開示や、本業を通じて社会の課題に取り組む流れが強まったことも、追い風になっています。地域との取り組みを、統合報告書やサステナビリティレポートで伝えたい企業にとって、始めやすい入り口になっているのです。
お金だけではない。「人材派遣型」という関わり方
企業版ふるさと納税には、お金を寄附するかたちのほかに、社員を自治体に派遣する「人材派遣型」があります。派遣する社員の人件費にあたる額を寄附とあわせて行う方式で、寄附と同じように税の優遇を受けられます。
内閣府の制度説明の資料には、実際の例が紹介されています。
リコージャパン × 奈良県葛城市:派遣されたシステムエンジニアが、住民サービスや役所の仕事を改善するアプリ15個の開発に中心となって関わった
九州電力 × 熊本県:県の施設への再生可能エネルギーの導入や、省エネの検討を支えた
宮崎太陽銀行 × 宮崎県高原町:地域商社の経営の土台づくりや、商品開発を支えた
お金の寄附でも、徳島県神山町の「神山まるごと高専」の設立支援や、北海道大樹町の宇宙港の整備など、地域の将来に関わる事業に企業の寄附が使われています。
人材派遣型のよさは、社員が地域の現場に入ることで、自社の強みがどう役に立つかが具体的に見えることです。派遣された社員にとっても、ふだんの仕事では得にくい経験になり、戻ってから新しい事業のきっかけになることもあります。
「税の優遇」より先に見たい、寄附先の選び方
寄附額の約9割の税が軽くなると聞くと、つい「どこに寄附しても同じ」と考えてしまいがちです。けれど、寄附したあとも関わりが続くかどうかは、選び方で大きく変わります。選ぶときは、次の3つを先に見てみてください。
1. 自社の強みと、地域の課題が重なっているか
食品の会社なら農業や食の事業、IT企業なら役所のデジタル化、交通や不動産の会社ならまちづくり。自社の強みが生きる事業を選ぶと、寄附だけでなく、ノウハウや人でも関わることができます。
2. 自社とその地域に、縁があるか
工場や支店がある、創業の地である、原材料の産地である、社員の出身地である。縁のある地域なら、社員や取引先にも取り組みの意味が伝わりやすくなります。
3. 寄附のあとに、関わり続ける余地があるか
一度寄附して終わりではなく、事業の進み具合を見に行く、社員が参加する、地域の事業者と一緒に商品をつくる。そんな続きがある事業を選ぶと、取り組みが社内外に伝わる「ストーリー」になります。
たとえば、こんな会社:地方に工場を持つ食品メーカーが、工場のある町の「特産品のブランドづくり」の事業に寄附。あわせて商品開発の担当者を人材派遣型で派遣し、町の生産者と一緒に新しい商品をつくる。寄附が、地域との共同の新しい事業の入り口になった。
寄附した企業が、受けてはいけない見返り
企業版ふるさと納税では、寄附した企業への経済的な見返りが禁止されています。寄附を理由に補助金を受けたり、入札で有利になったりすることはできません。

寄附した企業への経済的な見返りは禁止されています。公正な手続きをへた契約や、公募での施設利用などは条件つきで認められます。
一方で、感謝状を受け取る、自治体のサイトや広報誌でほかの寄附者と並べて社名を紹介してもらう、といったことは認められています。寄附先の自治体と仕事の契約をすることも、公正な手続きで行われていれば問題ありません。
なお、2025年9月の大臣会見では、自治体の計画の認定が取り消された場合に税の優遇を取り戻すことも含めて、制度の見直しを検討していることが話されました。寄附する前に、寄附先の事業の中身や進め方をよく確かめておくことが、これまで以上に大切になっています。
寄附までの流れと、社内で準備しておくこと
内閣府の資料では、企業側の流れが次のように紹介されています。
方針を決める:何のために寄附するのか、寄附先の候補を選ぶ
社内で調整する:社内向けの提案資料をつくり、決裁をとる
自治体と調整する:寄附の手続き、寄附を使う事業の中身を相談する
広報を調整する:贈呈式や報道発表など、どう伝えるかを決める
税の手続きをする:自治体から受け取る受領証をもとに、申告する
このなかで、つまずきやすいのが「社内で調整する」ところです。決裁をとるときは、税の優遇の説明だけでなく、「なぜこの地域・この事業なのか」「寄附のあと、どう関わり続けるのか」を一枚にまとめておくと、話が進みやすくなります。
そして、意外と後回しにされやすいのが「伝える」ところです。PlayBlueは地域でローカルメディアを運営してきましたが、地域の取り組みは、寄附した額よりも「誰と、何をして、何が変わったか」のほうが人に届きます。自治体の発表を待つだけでなく、自社のサイトやSNS、サステナビリティレポートで、現場の人の言葉や写真とともに伝えていくと、取り組みが社内外の共感につながります。
よくある質問
Q. 個人のふるさと納税と、何が違いますか?
A. 企業版ふるさと納税には返礼品がなく、寄附した企業への経済的な見返りは禁止されています。そのかわり、寄附額の最大約9割の税が軽くなります。また、寄附先は国の認定を受けた地方創生の事業に限られます。
Q. 中小企業でも寄附できますか?
A. できます。1回10万円から寄附でき、会社の大きさの決まりはありません。まずは縁のある地域の事業に、少額から始めてみる企業もあります。
Q. 寄附先の自治体や事業は、どうやって探せばいいですか?
A. 内閣府の地方創生のサイトで、地域再生計画の認定を受けた自治体や事業を調べられます。各自治体のサイトにも、寄附を受けつけている事業が載っています。工場や支店のある地域、創業の地など、自社と縁のある地域から探すと選びやすくなります。
まとめ
企業版ふるさと納税は、寄附額の最大約9割の税が軽くなる、企業が地域と関わる入り口です。寄附額は年々増え、社員を派遣する人材派遣型など、関わり方も広がっています。選ぶときは、税の優遇より先に「自社の強みと地域の課題が重なるか」「縁があるか」「寄附のあとも関わり続けられるか」を見てみてください。寄附を、地域と一緒に新しい事業をつくる最初の一歩にしていけるといいですね。
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