新規事業の進め方 |プロダクトができたあとの「最初の3ヶ月」と、検証の順番

「プロダクトはできた。デモの評判も悪くない。なのに、次に何をすれば伸びるのかが決まらない」。新しい事業を立ち上げたチームで、とてもよく聞く場面です。開発に手を取られているうちに、SNSも広告もPRも少しずつ手をつけては止まり、社内への説明資料は毎回つくり直しになる。この記事では、プロダクトができたあとの新規事業の進め方を「最初の3ヶ月」の順番で整理し、つまずきやすいところと、見ておきたい数字をまとめました。
プロダクトができたあとに止まるのは、出来の問題より「誰の、どんな場面のための事業か」がまだ一文になっていないことが多いです
最初の3ヶ月は「一文と3行にする → 届け先と検証の順番を決める → 毎週出して数字で振り返る」の順で進めると迷いにくくなります
SNS・広告・PRを一度に始めず、早く答えが出るものから1〜2つ試すのが近道です
目次
プロダクトができたのに進まないのは、よくあることです
新規事業の立ち上げでは、まずプロダクトをつくることに力が注がれます。けれど、形ができたあとに「次の一手」が決まらず、足踏みしてしまうチームは少なくありません。たとえば、こんな状態です。
「誰の、どんな場面のための事業か」を一文で言えない
LPや営業資料が、機能の説明ばかりになっている
SNS・広告・PR、どれから検証するか決まらない
稟議や経営陣への説明資料を、毎回つくり直している
開発で手一杯で、届け方を考える時間がとれない
どれも、チームの力不足ではありません。多くの場合、「誰に・何を・どこから試すか」がまだ言葉になっていないことが原因です。逆に言えば、そこが決まると、少ない人数でも同じ方向に進めるようになります。

プロダクトの出来より、誰に・何を・どこから試すかが言葉になっているかどうかで、進み方が変わります。
同じ技術でも、「誰のどんな場面」を変えると事業になる
「技術は同じでも、使う人と場面を言い直すと、新しい事業が生まれる」。そのわかりやすい例が、富士フイルムの化粧品事業です。
デジタルカメラの広がりで写真フィルムの需要が大きく減るなか、同社は2006年に化粧品事業に参入し、2007年にスキンケアシリーズ「アスタリフト」を発売しました。写真フィルムの材料の約半分はコラーゲンで、肌の主成分と同じです。また、写真の色あせを防ぐために研究してきた抗酸化の技術や、細かな成分を混ぜ合わせるナノレベルの技術も、そのまま肌の手入れに生かされています(nippon.com「【富士フイルム】写真技術で女性の肌を美しく」)。
ここから学べるのは、新規事業の出発点は「何ができるか」だけでなく、「それが、誰のどんな困りごとを解くのか」を言い直すところにある、ということです。プロダクトができたあとも、まずこの一文をチームでそろえることが、次の3ヶ月を進めやすくします。
プロダクトができてからの、最初の3ヶ月の順番
新規事業の最初の3ヶ月は、次の3つの段階に分けて考えると進めやすくなります。目標は一気に伸ばすことではなく、「次の3ヶ月に何を試すかがチームで見えていて、社内にも説明できる状態」をつくることです。

ゴールは一気に伸ばすことではなく、次の3ヶ月に何を試すかがチームで見えていて、社内にも説明できる状態です。
1ヶ月目:誰の、どんな場面のための事業かを一文と3行にする
最初にやりたいのは、初期のユーザーや商談した相手に「なぜ使ってみようと思ったか」「ほかの方法と比べて、何がよかったか」を聞くことです。5〜10人ほどで十分です。集まった言葉をもとに、事業の説明を一文と3行にまとめます。
一文:__な場面で困っている__のための、__
3行:① 何を解決するか ② 選ばれる理由(1〜2つ) ③ 使った人が、どうなれるか
たとえば、店舗向けの予約管理サービスなら「電話の予約対応に追われている個人経営の美容室のための、予約と再来店のお知らせをまとめて任せられる仕組み」のように書けます。この一文と3行は、LP、ピッチ資料、稟議の冒頭、SNSのプロフィールにそのまま使えます。チームと社内で言い方をそろえておくと、説明のたびに資料をつくり直す手間がぐっと減ります。紹介文の書き方は商品の魅力の伝え方でもくわしくまとめています。
2ヶ月目:届け先と、検証の順番を決める
言葉がそろったら、いちばん届けたい相手を「具体的なひとり」に決め、その人が情報を集めている場所を書き出します。そのうえで、SNS・広告・PRなど、試す順番を決めます。ここで大事なのは、1つ目の検証で「何がわかればOKか」を先に決めておくことです。

全部はやらなくて大丈夫です。届けたい相手がいる場所で、早く答えが出るものから1〜2つ選びます。
たとえば、こんなチームです。
BtoBのSaaSを立ち上げたスタートアップ:まずLPと少額の検索広告で「どの言い方がクリックされるか」を確かめ、反応のよかった言葉でウェビナーを1回開く
大企業の新規事業チーム:社内の別部署や既存のお客さまに声をかけてヒアリングを重ね、その声をもとに、経営陣への説明とLPの言葉を同時にそろえる
家業を継いで、サステナブルな新ブランドを始めたチーム:つくる過程を見せられるSNSと、共感してくれた人と関係を続けられるメルマガ・LINEの2つにしぼる
開発と並走できるよう、「週に何時間、誰が届け方に使うか」も、この段階で決めておきます。この3ヶ月の流れは、書き込める形のチェックシートにもまとめています。手元に置いて進めたいときは、TSUMUGU for Startup のチェックシート(無料)を使ってみてください。
3ヶ月目:小さく試して、数字で振り返る
3ヶ月目は、決めた場所で毎週なにかを出し続け、数字を見て少しずつ直す期間です。完璧を待つより、出して確かめるほうが早く進みます。見る数字は2〜3個にしぼります。
LPへの訪問数と、その流入元(どこから来ているか)
登録・資料請求の数(手前で動きが見える数字)
商談・問い合わせの数(最終的に増やしたい数字)
数字の読み方にも目安があります。訪問はあるのに登録されないときは、一文と3行か、LPの最初の画面を見直す。そもそも訪問が少ないときは、届け先と検証の場所を見直す。登録はあるのに商談につながらないときは、登録したあとの案内やフォローが足りていないことが多いです。効いたこと・効かなかったことを1枚にまとめ、経営陣や社内に報告できる形にしておくと、次の3ヶ月の予算や人の相談もしやすくなります。
よくあるつまずきと、その対策
機能が増えるほど、説明がわかりにくくなる
開発が進むと、伝えたい機能がどんどん増えていきます。LPや資料の先頭には、機能の一覧ではなく「使った人がどうなるか」を置き、機能はその根拠として後ろに回しましょう。
検証をいくつも同時に始めて、何が効いたかわからない
SNS・広告・PRを一度に始めると、数字が動いても理由が見えません。1つ目の検証は1〜2つにしぼり、「何がわかればOKか」を決めてから始めると、次の判断が早くなります。
社内への説明が、毎回ゼロからになる
説明の言葉がそろっていないと、相手が変わるたびに資料をつくり直すことになります。1ヶ月目にそろえた一文と3行を、稟議・報告・LPのすべての冒頭に置くと、説明の手間が減り、事業の芯もぶれにくくなります。
外に頼んだのに、思ったように進まない
副業人材や外部のパートナーに手伝ってもらうときは、「何を任せたいのか(考える/手を動かす/両方)」「どこまでをチームでやるのか」を先に決めておくと、お互いに動きやすくなります。頼み方の目安は副業のマーケ人材に頼む前に、決めておきたい3つのことにまとめています。
サステナブルな事業や第二創業で気をつけたいこと
循環や社会性のある取り組みは、共感は集まっても、それだけでは使う理由になりにくいことがあります。まずは「使った人にとって何がいいのか」を先に置き、そのうえで背景の思いを添えると、共感で終わらずに届きやすくなります。家業を組み直す第二創業でも同じで、これまでのお客さまと、これから出会いたいお客さまでは、響く言葉も場所も変わります。相手ごとに一文を分けておくと、どちらにも届きやすくなります。
PlayBlueも、洋服の染め直しアップサイクルプラットフォーム「somete」を自分たちで立ち上げてきました。そのなかで感じるのは、最初に頼りになるのは、実際に使ってくれた人が話してくれた言葉だということです。説明に迷ったら、まず初期のユーザーの言葉を集めるところから始めてみてください。
よくある質問
Q. 新規事業の検証は、どれくらいの期間で判断すればいいですか?
A. 1つの検証につき、まずは1ヶ月ほどを目安にすると判断しやすくなります。始める前に「何がわかればOKか」を決めておけば、期間が短くても次に進むかどうかを決められます。3ヶ月で一度、全体を振り返って組み直すのがおすすめです。
Q. 少人数のチームでも、SNS・広告・PRを全部やるべきですか?
A. いいえ。届けたい相手がいる場所で、早く答えが出るものから1〜2つにしぼるほうが、続けやすく、何が効いたかも見えやすくなります。
Q. 経営陣への説明は、どんな形にまとめればいいですか?
A. 1ヶ月目にそろえた一文と3行を冒頭に置き、そのあとに「試したこと・見た数字・次の3ヶ月で試すこと」を1枚にまとめる形がおすすめです。毎回同じ形で報告すると、変化も伝わりやすくなります。
まとめ
新規事業は、プロダクトができたところからが本番です。誰の、どんな場面のための事業かを一文と3行にし、届け先と検証の順番を決め、毎週出して数字で振り返る。この順番で進めれば、「次に何をすればいいかわからない」状態から抜け出す手がかりが見えてきます。
この記事の流れを書き込める形にしたTSUMUGU for Startup のチェックシートは、無料でダウンロードできます。地域の企業や採用向けのチェックシートは、資料ダウンロードの一覧からどうぞ。
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